西城町
西城町美味しい米作り研究会 大場忠正
美味しい米には理由がある!
比婆の神米ここにあり
「比婆の神米(かんべい)」の名を見て、そこに「庄原らしさ」を感じたなら、庄原好きの証し。このお米、天下の台所として名を馳せる大阪からも「ひばこし(比婆のこしひかり)」という愛称で親しまれ、注文が絶えないという隠れた名産米です。
全国の美味しいお米を食べつけているという人でも、一度食べると驚いて、ぜひ取り扱いたいと申し出てくださるそうです。そんなお米の魅力をご紹介します。
どういうお米を美味しいと感じるかは個人差がありますが、一般的には粘りのある米が好まれます。粘りを求めると、やはり「こしひかり」が不動の人気。米の成分でいうと「アミロース」が少ないほど、粘りは強くなります。こしひかりはこのアミロースの含量が少ない品種なのです。
もう1つ、米の食味にはタンパク質の含量が影響しています。タンパク質は栄養素として必要なものですが、米においては含量が多いと食味が悪くなってしまいます。タンパク質には水を通さない性質があるため、炊飯の際に米が水分を吸収するのを妨げてしまい、炊き上がりがパサパサした感じになってしまうのです。
なぜ最初にこのような米の成分のお話をしたかというと、この「西城町美味しい米作り研究会」では、こうした科学的な根拠を掴み、その理論に基づいて土作りからの米作りを実践されているからです。
ここ西城町には「西城川」が流れます。「水源の森100選」(地域住民の努力によって森林が守られ、維持されてきたことが評価されたものです)に選ばれた比婆山水源の森から湧き出る清流です。水田に水を引き入れるため、ため池をつくることも珍しくありませんが、ここは常に清流が注ぐ恵まれた場所です。水田の土には「庄原ブランド米推進協議会」で共有する「完熟竹堆肥」を使います。
堆肥の原料になる竹は、米の生産者さんたちが自ら竹やぶに入り伐採したもの。これを粗粉末にし、牛糞を混ぜて発酵させます。牛は乳牛か肉牛かで食べるエサが異なるため、牛糞の成分も変わってきます。だから牛糞も厳選します。これを竹粉と合わせて1年かけて完熟させます。好気性発酵といって、空気に触れることで発酵が促進されるため、数ヵ月おきに「切り返し」という作業を行ったりもします。
手間ひまと時間をかけて作る庄原だけのオリジナル堆肥です。さらに牡蠣殻を加えることでミネラル分を補ったり、鉄分を加えたりと工夫を重ねました。
完熟竹堆肥を散布した田んぼには「比婆の神米 特別栽培米ほ場」の看板が立てられます。そこに生産者は自らの名を書き込み、自身の意識向上と共に地域への周知を図っています。
庄原市内の協議会のメンバーと連携を図りながら、同会でも独自の厳しい基準を設け、基準を満たしたものだけが「比婆の神米」「比婆の舞」などのブランド米として販売されています。
お米は全国の様々な米のコンテストに出品し、常に高い評価を得ていますが、コンテストには食味値という機械を使って計測した数値で評価されるものと、官能評価といってお米の目利きができるプロが実際に食べて評価するものがあります。両方で高い評価を得ることは難しいことですが、客観的な評価を受けてきたことで、真に「美味しい米」であることが証明されます。
「安全安心は当たり前です。そこは当然として、私たちは『美味しい米』を作りたいんです!」
こうした思いに共感して、「ひばこし」を子どもたちに食べさせたいと言ってくれる保育所も増えてきたそうです。「ひばこし」を食べて育った子供たちにこの町の未来を託したい。そんな地域の強い絆が感じられる庄原の自慢のお米です。ぜひ「比婆の神米」の名を確認してから味わってみてください。