庄原里山の夢ファーム 市川基矩
勘に頼るだけではブランド米にならない
庄原を代表するブランド米「里山の夢」には
農家の夢が詰まっている
庄原を代表するブランド米「里山の夢」を生産するのは、庄原市山内地区にある協同組合「庄原里山の夢ファーム」の会員の皆さん。美味しいお米はイネを刈り取るタイミングも大事で、少しでも遅れたら味が落ちてしまうのだそう。それを長年の経験と勘に頼るのではなく、毎日の気温、地温、水温のデータから積算温度を算出し、必ず一定の数値を示したタイミングで刈り取るというルールをメンバー全員が守っています。ドローンを使ってイネの生育調査を行うなど、スマート農業にも積極的で、若手の就農者にも開放的です。
独自の厳しい基準を設け、それを満たすものだけが「里山の夢」あるいは「里山の夢 プレミアム」として販売されています。その基準の1つは食味値。専用の「食味機」と呼ばれる機械で測定します。圃場で生の米粒に赤外線を当て、食味の指標となるアミロース、タンパク質、水分、脂肪酸度を測定し、結果を総合して100点満点で評価するのです。
一般的には60~65点が標準で、点数が高いほど美味しい米とされていますが、同組合では80点以上が標準米です。またここでの標準米「里山の夢」は、特別栽培米の認証を受けており、農薬・化学肥料を慣行栽培の50%以下に抑えてあることが原則です。
「里山の夢 プレミアム」になると、食味値は85点以上でなお且つ、農薬・化学肥料は全く使わないで栽培された米というさらに厳しい基準が設けられています。
最大の特徴は生産者自らが伐採した竹を、粗粉末化して堆肥にしていること。古くから竹には体に良い成分があることが知られていて、笹の葉茶や竹炭パウダーなど食用としても利用されてきました。
しかし実際は農地を荒らす厄介者。里山の美しい景観と農地としての役割を阻害する邪魔ものだったのです。あるときこれを利用して循環型農業ができないだろうかと、少数の生産者と庄原市、JA、農業指導員や県立広島大学、県農業技術指導所などからメンバーが集まって試しに伐採した竹を粉にしたものを堆肥として使ってみました。
すると、いきなり高い食味値が出て驚いたと言います。そこから本格的に堆肥作りからの米作りがスタート。本当に美味しい米だということを証明しようと数々の米のコンテストに出品しました。
結果、毎年連続して何らかの賞を獲得。天下の台所、大阪のお米マイスターが審査する「第2回大阪府民のいっちゃんうまい米コンテスト」では総合最優秀賞(日本一を意味する)を受賞しました。
しかし「庄原里山の夢ファーム」では数々の受賞歴に甘んじることなく、さらに進化し続けます。土にミネラル分を補うため広島県産牡蠣の殻を粉末にしたものをブレンドしたり、イネの根を守る役目をする鉄分を加えたり、試行錯誤を重ね今でもその進化は続いています。
通常美味しい米の産地は、標高が500m以上が理想と言われていますが、この地区の標高は200m程度。米の産地としては最高とは言えない環境です。その中でこの土地に合った品種「あきさかり」を選び、土着の菌を活用した堆肥を自らの手で作り出しました。なぜ竹粉で美味しくなるのかという理由も明らかにしています。
生産者さんは誰もが「うちの米は美味しいよ」と言いますが、多くの場合それを客観的に証明するものはありません。「里山の夢」は”里山農家の夢が詰まったお米”がその名の由来だそうですが、決して絵に描いた餅ではありません。「継続して有言実行!」未来に大きな夢と希望を与えてくれるのは実行すること、続けること、そんな頼もしい背中を見せてもらった気がします。